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Vol.19 畳の道に入った以上はしっかりした技能を身に着けたい  だから技も知識も学び続ける

畳製造作業 砂川 貴幸さん

畳製作技能士  1級
畳製造作業
(平成14年度取得)

砂川 貴幸さん

1969年生まれ

砂川畳店

畳製作技能士 とは

 畳の本体は、稲ワラを縦横に何層も重ね、糸できつく締めあげた畳床。この畳床の上面を、どろ染めしたイグサを糸で編んだ畳表をくるみます。(まれに、どろ染めしないイグサも使います。)畳の長辺を飾る布は縁(へり)と呼びます。
 畳は空気が多く含まれるので防音効果や断熱効果があります。梅雨の湿気が多い時期は空気中の水分を吸収してくれ、部屋が乾燥すれば畳の水分を放出してくれます。夏は涼しく冬は暖かく暮らすことができ、日本の気候に適したものです。板張り床に比べ畳は弾力性があり、仮に転んだりしても、衝撃をやわらげてくれます。
 畳は日本の風土に合った伝統的な床材として、長い歴史があり、日本の建築物の変遷に伴い、主に近畿・中国・四国・九州と西日本の大部分で用いられている京間、中京間、関東・東北地方の一部・北海道・三重県伊勢地方の地域で使用されている江戸間、団地間などのサイズの異なる畳があり、色々な柄・色があります。畳の製作、敷込み及び修理に必要な技能・知識を保持している人が畳製作技能士です。

砂川 貴幸さんのお仕事

 畳は一度つくれば長く愛用できるものですが、時とともにイグサの色が変わり、ところどころ擦り切れたりしてしまいます。このように衰えてきた畳表を裏返したり、新しく敷き直したりするのは畳職人の仕事です。新しく畳をつくるよりも、直す仕事の方が多いのが現状です。
 畳表を変える際には、畳床にワラを足すことや微妙なゆがみを修正することなど、お客様に見えないところの調整を丁寧にすることに心がけています。

畳製作の仕事に興味を持ったきっかけを教えてください

写真:砂川 貴幸

 私は、この畳店の三代目です。子供の頃から父の仕事を見て育ち、掃除やら何やらの手伝いをしていて、自分も、当然後を継ぐものと考えていました。
 ただ、学校を終えて直ぐにこの仕事に入ったわけではありません。25歳で畳の仕事に携わるようになるまでは、会社員でした。やはり、畳職人とは違う世界も見ておきたかったのです。
 興味をもってこの仕事に入ったというのとは違いますが、身近なところで仕事を見てきたという経験は大きな財産です。実際に畳の仕事を学んでみると、全体の流れを知っているので理解しやすかったです。仕事を覚えるときに、見て知るというのは大切なことだと思います。

仕事のやりがい、面白さを教えてください

写真:砂川 貴幸

 父がよく口にしていたのですが、手ではなく道具が仕事をするものだと感じています。技能が向上すれば、道具を選ぶ目も確かになっていきますし、自分の手に馴染むものとそうでないものとの区別もできるようになるものです。
 例えば針一つでも、馴染む馴染まないがあります。10本買い入れたとしても、実際に使えるのは2、3本しかありません。こういう感触や微妙な違いが分かってくるのは職人として重要なことだと思います。
 畳を切る包丁も同じです。畳の本体は、ワラを何層も縦横に組み合わせ、これを糸できつく締め付けて作る畳床ですが、これを切り口鮮やかに、しかも寸法通りに切るには、十分に手入れをし、手に馴染んだ包丁でなければうまく行きません。自分の流儀に合わせて包丁を仕上げていくのも、技能が熟してくるのに伴ってできようになるものの一つです。

仕事の難しさはどんなところですか

写真:砂川 貴幸

 今の畳作りでは機械縫いがほとんどです。機械ですから、データを入力すれば完璧な形と大きさの畳ができると思われるかもしれませんが、実際には簡単にできるものではありません。
 理由は二つあります。一つは、寸法の測り方がまずいからです。部屋というのは一見すると正方形に見えても、少しずつ違いがあります。したがって、縦と横を測っただけでは部屋の形にぴったり合った畳はできないのです。機械はデータのとおりに動きますが、入力する人が建物のことを分かっていないと駄目なのです。畳直しの際には、ゆがみを正すために、できる限りの工夫をして戻すのですが、残念ながらこういう苦労は畳表の中に隠れてしまって、お客様には見えません。
 もう一つは、あまりにもぴったりした大きさでは、畳は部屋に収まらないのです。何と言うか、機械ですから1+1は2になるのですが、本当に必要な答えは、1.9だったり2.1だったりするものです。微妙な加減が必要なのです。機械で大まかなところまで作っても、最後は、知識と経験をもとにして細かい手直しをしてやらなければなりません。 
 とはいえ、仕事の難しさというのは、面白さでもあります。腕の見せ所です。


仕事で心掛けていることはありますか

写真:砂川 貴幸

 当たり前のことをきちんとやることです。
 畳の仕事は、新しい畳を作るよりも、お客様が普段使っているものをお預かりしてきて、店で直して元に戻すことの方が多いのですが、お預かりしている畳は丁寧に扱うという心が、仕事の基本だと考えています。
 直した畳は、だいたい3時頃までには戻しに行きます。お客様の生活のリズムなどを考えると、これくらいの時間までに戻すようにすれば、買い物や夕飯の支度などその後の用事に差支えが出ないようにするなどの心配りも、当たり前のことですが大切にしています。
 材料も、多少高くても自分の眼で見て良いものを使います。商売勘定からすると別の選択肢もありますが、自分としては、第一に良い職人でいたいという気持ちが強いです。この辺りは兼ね合いも必要なのでしょう。

畳製造技能士1級の資格を取得するまでのことを教えてください

写真:砂川 貴幸

 畳職人の世界に入ったのは25歳の時でした。最初は週に2日、3年間、訓練校に通いました。私も含め9人の同期生がいて、そのうち8人が2級技能士の検定を受けましたが、そのなかでも1級に挑戦したのは私だけでした。
 家業を継ぐということも含めて、自分の人生を賭けるわけですから、おのずと真剣になります。折角やるなら一番になろうという気持ちでした。
 1級技能士の資格に挑戦するときにありがたかったのは、県の畳工業協同組合の青年部の先輩たちが開いてくれる練習会でした。2か月間、時には零時過ぎまで練習の指導をしてくれました。
 ありがたかったのは確かですが、厳しい練習会でした。至らないところを、ビシビシ指摘を受けるので、この練習会のための練習をしたくらいです。文字通り歯を食いしばって参加していましたが、ここで技能が向上したのは間違いないです。
 最近気になっているのは、こういう厳しい鍛錬の場に食らいついていく若手の姿がめっきり減ったことです。

資格を取得して良かったと感じるのはどんなところですか

写真:砂川 貴幸

 技能の裏付けが得られることです。
 技能というのは、作業する人それぞれの個性が現れるものですが、その個性が向上していくうえでは、技能検定に取り入れられている内容が基盤になると思います。優れた先輩方がいろいろな面を考慮してまとめ上げた検定項目だけあって、よく考えられた内容です。

今、どんなことにチャレンジしていますか

写真:砂川 貴幸

 ひと口に畳と言っても、実に様々です。
ま ず、身近なところでも、縁(へり)のあるものとないものがあります。また、地域による大きさの違い。京都周辺の京間、関東間(江戸間とも呼ばれます)、中京間など建物に応じたサイズの区別があります。さらには、普通の家庭で使われている畳のほかにも、今では神社やお寺の調度具として使われている有職畳というのがあります。こうした違いに応じて、畳を作る技能も異なります。
 私は、関東で仕事をしていますが、関西の畳の技術も勉強しています。畳の中には板入れ畳と言って、畳の端に板を入れて畳表を掛ける手法がありますが、この作り方が、東と西ではかなり異なっているのです。今は、この関西の技能を勉強して、現在の仕事に取り入れたいと考えています。
 また、茵(しとね)、厚畳(あつじょう)などの有職畳の技能も勉強しています。
板入れ作業には時間と労力がかかりますし、有職畳の注文などほとんどないのですが、こういう取り組みの中で、自分の技能の向上を目指し、仕事の幅を広げていきたいと考えています。

畳製作の仕事を目指す人たちへのメッセージをお願いします

写真:砂川 貴幸

 畳を相手に仕事をするのであれば、やはり畳の良さを自分自身が知っておくことが大事だと思います。仕事をする以上は、自分が作るものの優れた点を可能な限り引き出すことが基本ですから。そして、できれば建物全体のことにも関心を持ってほしいです。
 もう一つは、技能の修得について理解しておいてほしいことがあります。これは、畳職人だけに限ったことではないのですが、例えば、何人かの先生や先輩から教えてもらうと、それぞれの仕事のやり方が違うことに面食らうかもしれません。もちろん基本は同じなのですが、それでも、人によってやり方の違いはあります。このとき大事なのは、どちらが正しいのかと悩むのではなく、先生や先輩の違いを同時に受け入れることです。
 その違いを受け入れながら、仕事の経験を積んでいく中で自分にとって一番良い型を身に着けていくという心構えを持っておいてほしいです。

プロの道具~畳製作技能士 編

 

道具の名称

道具の名称

中央は「糸筒」で畳糸を入れておく。下に半円で白く見えるものが「畳糸」。
その上の三角形は、針を刺すときに使う「手当て」。真ん中の2本は「畳針」。
その上に3本刺さっているのが「縁引き」で畳の縁を引っ張る際に使う。
糸筒の右側の上は、へりの幅を決める「わたり」。
下は、上から順に「小包丁」「落とし包丁」「かまち包丁」(写真の小包丁は、元々大きかった包丁が使い込むことで小さくなりました)。
「糸筒」の左側は、「待ち針」と「こがね」。
さらにその左手は「金槌」で糸を締める際にワラを馴らすもの。

砂川 貴幸さんのある日のスケジュール

9:00
お客様から畳を預かる(戸建の場合はもう少し早い時間)
10:00
お店で預かった畳を直す(以前はお客様のお宅で作業することもできたそうです)
15:00
直しを終え、お客様に畳を届ける ※畳を預かる際に移動した家具類を元に戻す
18:00
業務終了

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