石橋技術者養成講座

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平成29年度上半期

石橋技術者養成講座とは

石橋技術者養成講座

○日本に唯一残った、江戸期から続く石橋架橋に特化した石工集団の技を継承、活用するため、座学・研修・実習の講座を実施する取組。
◆国内の石造アーチ橋の多くが撤去されているなか、その優れた機能と文化価値を守るため、石橋の保存、修復等を行うとともに、架橋の技能の継承活動を行っている。平成23年度に「種山石工技術継承講座」として始まった本養成講座により、平成27年度までに石橋の構築修復技術を指導できる技能者5名を育成。
◆熊本地震で被災した石橋の復旧や、県内外の石橋の新規築造、修繕・修復を行う等、高度な石工技能の継承の取組であることが評価された。

取組の詳細

 江戸時代後期、肥後(熊本)には当時、国内では稀な石橋築造技術を有する石工集団が発生し、霊台橋・通潤橋をはじめ、熊本を中心に生活に密着した大小多くの石橋を残してきた。明治期には東京にも数橋を架設、薩摩(鹿児島)を経由した技術は山形県にも伝播して石橋群をつくり、国内に永久橋の時代を到来させた。
 しかし、高度経済成長期に入り、日本の橋梁技術はコンクリートや鉄を用いて、急速な進展を見せる一方で、石橋石工集団の確かな技術を受け継ぐ技術者は減少の一途をたどり、平成10年時点で竹部光春氏(当時65歳)ただ一人となった。
 種山石工の技術的末裔である竹部光春氏と関係者の強い危機感は、平成23年になってようやく、「種山石工技術継承講座」という形で開始された。文化庁、熊本県文化課、山都町教育委員会、日本の石橋を守る会、九州橋梁・構造工学研究会などの支援により、文化財としての石橋修復技術者を、少数ずつではあるが輩出し続けている。
 第1期(平成23年度)から第5期(平成27年度末)まで、竹部光春氏の指導のもと毎年5名程度の受講者を受け入れ、養成講座を実施してきた。第6期は平成28年熊本地震により、石橋技術者養成が急務となったため、第5期までの受講者のうち、実力をつけてきた5名を実地講師として、竹部光春氏監修のもと講座を進め、14名の1期修了者を得た。
 第7期(平成29年度)からは講座の拡充のため、「一般社団法人石橋伝統技術保存協会」に移管して運営体制を強化し、これまでの「種山石工技術継承講座」から名称を「石橋技術者養成講座」に変更し、これまで以上に石橋伝統技術の後継者育成に力を入れていこうとしている。
 毎年の講座内容は、(1)基礎知識習得のための石橋の専門家による座学、(2)石材加工・石橋構築の実習、(3)肥後の石工の作品群の見学研修、(4)講座教材としての新規石橋の築造、の4項目を柱に教育を実施している。
 講座教材として新規築造した石橋は、遊水橋・踊水橋・花漣橋(いずれも熊本県山都町)の3橋、講座実施期間中に修繕・復元の実習を行った既存石橋は、川内田堀切橋(熊本県御船町)、須野前橋(同宇城市)の2橋、また、講座実施期間外に修繕・復元等の実習を行った石橋は、楠浦眼鏡橋(同天草市)、平山橋(同山鹿市)、小巌橋(山形県南陽市)、洗玉橋(福岡県八女市)、本の橋眼鏡橋(同八女市)、二俣福良渡(同美里町)の6橋、合計11橋(うち、文化財8橋)の実績となり、技術的評価も高く、副産物としての観光振興にも寄与している。

取組のアピールポイント・特徴・取組の効果

●アピールのポイント・特徴 
 平成10年当時国内でただ一人、石橋の構築修復技術の継承者である竹部光春氏(肥後種山石工の祖、藤原林七から数えて7代目となる)の後継を育てる環境が日本にはなかった。しかし、平成23年から28年度(竹部光春氏監修、78~82歳)の本講座により、5名の弟子が生まれた(残った)。5名は石橋石工の指導者としての力量と気力を持つ段階に至っており、新規受講者を指導できる体制が整った。江戸後期に発生した石橋石工集団が甦りつつある。このことは、日本固有の重要な伝統技術文化の一つを守り、消滅を回避したと言える。
●取組の効果など
 今後の継続により、以下の効果が期待できる。
1.壊されようとしていた石橋が甦り、地域住民の心のより処としての、高度文化を内在する地域文化財が守られる。
2.道路橋・歩道橋としての機能が甦り、更に伝統工法による拡幅が可能なため、架替えが不要になる可能性がある。
3.全国の石橋を守ることができる石工(匠)集団が、熊本を中心とした新しい地域産業として創造される可能性がある。
4.修復された石橋は、日本の原風景としても観光振興に直接寄与し、地域活性に資することが想定できる。
5.(一社)石造文化財技術機構による、石橋石工の技術者認定試験を受験させ社会的な位置付けを行うことで、受講者の生計の安定を支援することができる。
6.地元県立高校などが、石工養成講座の見学や実習授業を実施しており、職業選択肢が増えたと言える。
7.確実な修復実績を残すことで、文化財石橋の正しい修復工法の在り方を全国に伝播させることが可能になる。
8.上記により、国内の文化財石橋の維持管理の品質が、相対的・普遍的に向上していくことが想定できる。

企業・団体の紹介

一般社団法人 石橋伝統技術保存協会

<業種>技術教育団体  
<業務概要等>文化財である石橋・石垣の、構築・維持修復技術者の教育講座および伝統技術の継承・保存・進化・活用に必要なことの実施。

所在地
〒861-3516
熊本県上益城郡山都町千滝222-1

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