Vol.03 1台1台のピアノの個性を見極め、技能を尽くして最良の音を甦らせる。

 進藤 尚美さん

ピアノ調律技能士 1級

(平成25年度取得)

進藤 尚美さん

1975年生まれ

小野ピアノ工房調律センター所属

ピアノ調律技能士とは

ピアノ調律は、経年劣化するピアノのコンディションを診断し、全鍵盤を正しい音律に合わせ、鍵盤タッチとペダルが正常動作するように点検・調整する仕事です。ピアノ調律技能士は、そのような作業を通じて問題のある個所に適切な処置を施します。

進藤 尚美さんのお仕事

進藤さんのお仕事は、音程を合わせる「調律」、全鍵盤の音色を整える「整音」、鍵盤の弾き心地を整える「整調」、部品交換を行う「修理」の4つの工程からなります。定期的なメンテナンスに加え、塗装や木工修理、弦の張替えといった大掛かりな修理作業が必要な、古いピアノの再生にも積極的に取り組んでいます。

ピアノ調律の仕事に興味を持ったきっかけを教えてください。

写真:進藤 尚美

私は6歳からピアノを習っていたので、ピアノ調律という仕事は比較的身近な存在でした。仕事として本格的に興味を持ったのは高校生のときです。将来仕事をするなら、何か専門的な技能を身につけたいと考えていたのですが、「それなら今まで身につけた知識を少しでも生かそう」と思いピアノ調律の道に進むことを決めました。

技能士の資格取得に向けて努力したことはありますか?

ピアノはたとえ同じ機種であっても、温度・湿度など設置してある場所の環境や、使用頻度によって状態が変わります。調律を行うときはそのようなピアノの「個性」を瞬時に見極め、適切な対応を行わなければいけません。

制限時間が設けられている技能検定においては、なおさら冷静な対応が求められるので、普段の仕事でも常に作業時間や必要な作業を明確にイメージして、与えられたピアノに真剣に向き合うことを意識しました。

技能検定を受検してよかったと思うことはありますか?

写真:進藤 尚美

学科試験に向けて、さまざまな本を手に取り、ピアノの歴史などを改めて勉強できたのがよかったと思います。お客さまにも自信を持って、ピアノの説明ができるようになりました。

また、実技試験で調律を行う際、チューニングピンがとても硬く、苦戦するということがありました。試験ということで、ただでさえ緊張していたときに起きた不測の事態でしたが、そのようなことは普段の仕事でも起こり得ます。どんな状況でも焦らず、落ち着いて仕事に取り組む大切さを、試験を通じて学びました。

普段のお仕事の中で心がけていることを教えてください。

写真:進藤 尚美

お客さまは初心者の方から、お仕事として専門的にピアノを弾かれる方までさまざまですので、ピアノを弾く本人にしっかりとヒアリングを行い、要望に応じた調律を行うことを心がけています。例えば、家庭で使うピアノなら最低でも1年間はしっかり音が持つよう調律する。2時間のコンサートで使うピアノなら、その間はなるべく音が狂わないよう調律するなどです。

大切なのは、1台1台のピアノが持っている一番良い音をイメージし、その「理想の音」に少しでも近づけること。そこには費用や時間といった制約もありますが、お客さまと細かく相談して、自分の技能のベストを尽くしています。

お仕事の中で大変なことはありますか?

写真:進藤 尚美

意外と力仕事が多いことですね。ピアノ一台約230本の弦を張り替える作業は相当な力と集中力が必要ですし、グランドピアノのメカニック部分はかなり重量があります。自分がイメージする理想の音を作り出すには「体力」も必要なんです。なので、定期的にスポーツジムに通って体を鍛えています。

進藤さんが仕事の中で「輝いている」と感じる瞬間を教えてください。

お客さまの喜ぶ顔を見たときです。以前、経年劣化が激しかったピアノを全面的に修理したことがあります。弦の交換などを含め、かなり大がかりな作業になったのですが、納品後にお客さまが「あんなに古びていた音を、ここまで甦らせてくれてありがとう」と本当に喜んでくれたんです。そのような言葉をかけていただいたときは、心からやりがいを感じます。

最後に、これから技能検定を受ける人たちへのメッセージをお願いします。

写真:進藤 尚美

技能検定を受検する上で大切な心構えは、試験のために勉強するのではなく、その先にある「仕事」を見据えて勉強することだと思います。なので、日々の仕事をより充実したものにすることが、合格への一番の近道です。そのような心構えがあれば、技能検定は自分の仕事を深く見つめなおす機会にもなるので、今後の成長の上でも必ず良い経験になるはずです。

プロの道具~ピアノ調律技能士編

 

チューニングハンマー(写真左から二番目)

チューニングハンマー(写真左から二番目)

ピアノ調律を行う際には、弦が巻かれているチューニングピンを、チューニングハンマーで回転させて音の高低を調整する。これがなければ仕事が始まらないという、ピアノ調律技能士を象徴する道具。

進藤 尚美さんのある日のスケジュール

10:00
お客さまの家に直接出向き、調律作業
12:00
昼食
13:00
工房で預かっているピアノの調律・修理作業
15:00
休憩
15:30
作業再開
16:00
接客(工房では中古再生ピアノの販売も行っているので、見学に来たお客さまへの対応も行う)
20:00
作業終了

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